ヘッダー加工とは、冷間圧造加工のことを指します。金型を使い、コイル材を常温で変形させていく量産向けの金属加工方法です。コールドヘッダー、フォーマー、ホーマーと呼ぶこともあります。
はじめてヘッダー加工という言葉を聞いたかつての私は、「ヘッド=頭?」と連想しました。実際、量産品のねじやボルトの頭部加工によく使われる加工方法でもあります。ナットの量産にも使われています。
日常生活では馴染みの薄い、ヘッダー加工についてまとめました。
ちなみに、ヘッダー加工は英語だと「Heading」と呼びます。Headerではないんですね。
ヘッダー加工=冷間圧造とは
ヘッダー加工とも呼ばれる冷間圧造。「冷間」とは言っても、鉄を冷やして加工するわけではありません。
常温の金属に金型を使い圧を加え、変形させます。これは、金属の「塑性変形」という特性を生かした加工方法です。
こちらの、ヘッダー加工でのねじの作り方図解の動画がシンプルでわかりやすかったです。
冒頭の私が描いたイラストでは、いきなり六角頭が作られているように描いてしまっています。このように作られるボルトもありますが、一般的な六角ボルトの頭部は作り方が異なります。
六角ボルトの頭部の形の違い
- アプセット:金型で六角頭を一気に作る
- トリーマ:金型で平リベット頭を作ってから、六角形にトリミングする(一般的な六角ボルトはこっち)
アプセットボルトは、こんな形の六角頭のボルトです。六角形のふちが盛り上がったような形をしています。
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一方、トリーマの六角頭はこんな形です。一般的な六角ボルトも同じ形で、六角形のトリミングダイスで六角形にカットして作られています。
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冷間圧造は量産向きの加工方法
ヘッダー加工は、ねじやボルト、ナットなどの大量生産に向いている加工方法です。なぜなら、加工スピードがとても早いからです。
特に、旋盤加工やフライス加工といった切削加工と比べると、そのスピードの差は圧倒的です。金属を丁寧に削るより、金型でガンガン打っていく方が早いです。
さらに、多段ヘッダーという複数の工程を同時に行える機械を使えば、生産スピードは更に上がります。
こちらのナット製造の動画も、冷間圧造が量産に強いことがよくわかると思いました。
また、金属を常温のままで加工できるという点も、製造スピードの速さには重要です。
たとえば、冷間圧造に対し「熱間鍛造」という加工方法もあります。金属を高温にしてから加工するので、冷間圧造より加工時間は長くなります。
仕入れたコイル材をそのまま加工できるのも、冷間圧造の強みといえます。
ヘッダー加工のデメリット
製造スピードが早いヘッダー加工にも不得意な加工があります。それが、下記3点です。
- 少量生産は割高になる
- 大型製品は加工できない
- 複雑な加工もできない
これらの条件にあてはある製品を新たに作りたいときは、切削加工や熱間鍛造などを検討すべきです。
少量生産は割高
ヘッダー加工には金型が必須です。そのため、新しい製品を作るときは新しい金型も必要です。
数十万~数百万円の金型という初期費用が発生するので、製造ロットが少ないと単価が割高になります。切削加工屋さんに作ってもらうほうがよいと思います。
大型製品は冷間圧造だと難しい
大きな金属製品をヘッダー加工で作るのは、非常に難しいです。なぜなら、常温で大きな金属を塑性変形させるには大きな力が必要だからです。
細い爪楊枝は手で簡単に折れるけど、丸太をカットするにはチェーンソーなどのマシンが必要ですよね。金属もそれと同じで、大きなものを変形するには物凄いパワーが要ります。
大きな金属製品の製造には、切削加工や熱間鍛造が向いています。精度が必要なら切削加工、中~大ロットでの製造が必要なら熱間鍛造が望ましいです。
たとえば、太径ボルトは熱間鍛造で量産されます。メーカーにもよるとは思いますが、M36前後からは熱間鍛造で作られているものが多い印象です。
もうひとつの例として、六角ナットもわかりやすいです。M30などの大きなサイズになると、切削ナットもしくは黒皮ナット(熱間鍛造で作られており、熱を加えて黒くなっている)しかありません。冷間圧造では作れないサイズということです。
一般的な小さい六角ナットは、ほとんどが冷間圧造品です。切削ナットや黒皮ナットと区別するために「ホーマーナット」と呼ぶ人も多いですね。
複雑な加工は不得意
ヘッダー加工は、切削加工などの機械加工ほど複雑な成形はできません。
クッキーの型抜きを想像してみてください。星型くらいはくり抜けるかもしれませんが、雪の結晶を一発で抜こうとすると難しそうだと感じると思います。ナイフなどでクッキー生地を切っていく方が確実です。
精度が求められる製品は、やはり切削加工が強いです。もしくは、冷間圧造か熱間鍛造で大まかな形を作ってから切削、というのもありですね。
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