プレス加工の種類まとめ 金型で打ち抜きも曲げもできる量産マシン

プレス加工 金属加工の方法

プレス加工とは、金型を使って金属を変形させる金属加工方法です。クッキーのように板金を打ち抜く加工も、板金や棒材を曲げる加工も、プレス加工の1種です。

一度金型を作ってしまえばどんどん量産できるので、大量生産向けの加工方法といえます。

金属加工初心者の私は、「プレス」という言葉を耳にする機会が多すぎて混乱していしまいました。覚書としてプレス加工の種類をまとめます。

主なプレス加工は大きく分けて4種類

私が金属加工業界でよく耳にするプレス加工は、以下4種類です。

よく使われるプレス加工の種類
  1. せん断
  2. 曲げ
  3. 絞り
  4. 張り出し

せん断

せん断とは、はさみと同じような原理で板を切断する加工を指します。プレスでいうと、金型を使う打抜き穴あけ切断などです。

クッキーの型を抜いたり、生地を切ったりするイメージです!

せん断については、シャーリングマシンのページでも解説しています。プレスでのせん断も同じ原理です。

曲げ

板金や棒材を曲げる加工も、プレスが得意とするところです。

直角の金型を押し当てれば、板を90度に曲げられます。曲線の金型を押し当てれば、R曲げのような曲線になります。板ものだけでなく、丸棒などの曲げも可能です。

また、金型をうまく作れば、複数の曲げを一度に加工することも可能です。

たとえば、板金のコの字曲げは、曲げる箇所が2箇所あります。しかし、コの字型の金型を作れば、一度のプレス動作で同時に曲げられます。

0:54あたりからの曲げ加工では、コの字曲げを一発で行っています。

絞り

せん断や曲げより少し馴染みの薄い加工方法に、絞りというものがあります。

絞りとは、板金を容器の形に変形させる加工方法です。円筒型や角筒型など、金型によってさまざまな形にできます。

プレス1回で容器が生まれている!!

私達の日常生活で使われる金属製品にも、絞り加工は多く使われています。たとえば、キッチンのシンクやボウルなどは、絞り加工で作られているものが多いです。

シンクのように深い絞り加工を「深絞り」、キッチン用品のバッドやトレーのような浅い絞り加工を「浅絞り」と呼びます。

ちなみに、絞り加工した製品はプレスによる圧で加工硬化(ギュッと圧をかけて硬くなること)が起きています。そのため、板厚が薄くても丈夫というメリットもあります。

張り出し

絞り加工とよく似たプレス加工が、張り出し加工です。絞り加工と同じく、容器のような形を作る加工方法です。

張り出し加工と絞り加工の違いは、プレスした部分の厚みです。

張り出し加工は、板金の周りを固定した状態でプレスし、プレス箇所だけを引き伸ばすように変形させます。プレス箇所の板厚は薄くなるものの、プレスしても製品全体の大きさは変わりません。

一方、絞り加工は、板金の周りを固定せずにプレスします。そのため、プレスすると周りの板も金型の中に引き込まれます。プレス箇所の厚みは変わらない代わりに、完成品全体は一回り小さくなります。

薄く伸ばした紙粘土を押し込むとそこだけ薄く伸びますが、紙は無理やり押し込んでも伸びることはなく引き込まれます。そんなイメージです。

張り出し加工は、身近なところでは車のナンバープレートなどに使われています。ナンバープレートのエンボス加工箇所は、他のプレート部分より板厚が少し薄くなっています。

プレスは大量生産向きの加工方法

上記で紹介した4種類のプレス加工は、いずれも量産に強い加工方法です。なぜなら、一度金型を作れば短時間で多くの製品を作れるからです。

ただし、新しく金型を製作すると数十万円、高いものだと数百万円のコストがかかります。逆に言うと、初期費用をペイできるくらいの大量生産でないと、プレス品は割高になってしまいます。

絞りや張り出しの金型の製作は非常に難しいらしいので、特に高価なのかも……

専用金型を使わないプレス加工もある

プレスは専用金型を用いる加工が主ですが、なかには専用金型を使わない方法もあります。

それが、ブレーキプレスパネルベンダーを使う曲げ加工です。

ブレーキプレスの曲げ加工

プレス機のなかには、ブレーキプレス(プレスブレーキ、ベンディングマシンとも)という曲げ加工に特化したマシンがあります。

ブレーキプレスには、直角やR曲げといった汎用金型が多数あります。それらを交換し、さまざまな曲げ加工が可能です。

ちなみに、ブレーキプレスとプレスブレーキという呼び方は、Googleで調べた感じだと同じくらい使われているようです。

ブレーキプレスで厚板を曲げている動画。マシンも板も大きい!

上の画像のように、パワーがあるブレーキプレスだと厚板や大きい板金も曲げられます。

パネルベンダーでの曲げ加工

曲げ専用のプレス機には、パネルベンダーというものもあります。ブレーキプレスでは手動で行う必要のある、板の位置決め等の作業が自動化できるプレス機です。

ブレーキプレスより自動化されたマシンのため、ベテラン作業者でなくても安定した品質で製造できるのが強みです。

マシンが自動で板を動かして曲げていっている!

ただし、パネルベンダーは薄板の加工しかできません。厚い板の加工は、ブレーキプレスの方が得意です。

特別枠:へら絞り

金型は作るけれど量産には不向き、という特殊な加工方法もあります。へら絞りという加工方法です。

金属を圧力で変形させるという意味では、プレス加工と原理は似ています。しかし、加工方法は全く異なります。

へら絞りでは、回転する板金に金属のへらや棒を押し当て、その形に曲げていきます。それを金型の形に近づけていくという加工方法です。

最近は徐々に機械化されきましたが、職人さんが手作業で曲げていく伝統的なへら絞りもあります。熟練の技術が求められます。

「へら絞り」と聞くと、まだまだ職人さんが作る方をイメージする人が多いのではないでしょうか。

職人のおじさまの凄腕技術…格好良すぎる!!

へら絞りは、新幹線やロケットの頭部分にも使われる技術だそうです。夢がありすぎます!

より身近なものだと、中華鍋などにも使われているとか。こちらは自動化されているかもしれませんね。

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